ガーデニングというと広い庭がある一戸建でないと行えないと思われる方もいるかと思いますが、庭がないマンションであってもベランダやバルコニーを利用して、ベランダガーデニングを楽しまれている方は沢山いらっしゃいます。また、今はまだベランダガーデニングを行っていない方でも「今年の春にはベランダで何か育ててみようかな」と考えられている方もいる事でしょう。
直接地面に植物を植える一戸建てガーデニングと異なり、ベランダガーデニングは、基本的に鉢やプランターなどの容器植えで植物を育てるのが基本となります。面積や使用ルールに制限があるベランダでは、当然ながら植栽スペースが限定されますし、結果として環境的にも難しい点が出てくることがあるのですが、容器植えにする事で柔軟性のある対応が行えるのです。
例えばコンクリート製のベランダでは夏の暑さは地面よりはるかに厳しい事になる事が多いのですが、そのようなときには風通しがよくあまり日が当たらない位置に鉢を移動することができるのです。また鉢植えで植栽面積が制限されるという事は、必然的に低コストで気軽にガーデニングをはじめられる事になります。
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しかし気軽に始められるが故に、ベランダで植物を育てるときの注意点などを知らないまま初めてしまい、近隣住民やマンションに住んでいる他の方との間で問題を起こしてしまっている方も現実にいらっしゃいます。
そこで今回はそういう事にならないように、マンションのベランダでガーデニングを行う際に注意する点について整理してみたいと思います。
土の問題
ガーデニングをやっている方はご存じだと思いますが、ガーデニングでもっとも大切なのは土です。そしてベランダガーデニングを継続して行ったときに問題になってくるのも、また土なのです。
この問題はあまりベランダガーデニングを扱ったサイトなどでも記載されていないですし、継続してガーデニングを行わないと発生しない問題なのですが、ベランダでガーデニングを行ったとき一番困るのが土の処理問題です。
ベランダガーデニングの基本は鉢やプランターを使った容器栽培です。植物を育てるとき、そこが庭であれば植え替えはあまり考えなくてもいいのですが、狭い容器植えの場合には定期的な植え替えを行う必要が出てきます。
容器内の古い土を捨てて新しい土を入れ、そこにあらためて植物を植えるわけですが、このときゴミとして古い土が発生します。仮に古土を再生して再利用する場合であっても、全部が再利用できるわけではなく、ふるいなどで選別して再利用する事になり、この場合でも結局は大量の廃土が出る事になります(経験的には古土を再利用したとしてもおおむね半分の古土はゴミになります。)
さて、この古土ですが、一戸建てであれば庭があるためそこに捨てれば問題ありません。捨てられた古土は自然界でリサイクルされていずれいい庭土へと再生される事でしょう。しかし庭のないマンションだとそういうわけにもいきません。
鉢植え植物の植え替えは、品種や容量にもよりますが、2,3年に1回は行うものです。また1年草であれば、毎年古い土を廃棄し新しい土を使事になります。
鉢に入っている土の量ですが、比較的コンパクトな6号鉢でも容量は2リットル、バラなどを植える最低サイズである8号鉢ともなると5リットルほどの土が出ます。また野菜を育てたり寄せ植えを行う60cm程度のプランターであればその容量は12リットル程度。
つまり、ある程度の数の鉢やプランターがある場合、毎年植え替えなどの際に数十リットルの廃土が出るのです。
いちいち捨てるのはめんどうだから…と、たとえばこの廃土をベランダの排水溝に流してしまう方もいるようですが、これは絶対にやめてください。マンションのベランダの排水設備は、当然ですが大量の土が流されてくるような条件をそもそも想定していません。
最悪の場合、マンションの排水管が詰まり大規模な工事が必要になる可能性がありますし、そうなってしまってはとても責任が取れません。
ベランダガーデニングの場合には、植え替えのときに出る廃土はかならずちゃんとした手段で廃棄するようにしてください。土が何ゴミになるかは自治体にもよるのでそれに準じてもらえばいいのですが、中には「土は収集しない」という自治体もあるようです。自分の住む自治体で土がどのような扱いになるかをよく確認してきちんと廃棄するようにしてください。
マンションに共同庭などがあり、そこに土を捨てられるようであれば扱いはだいぶ楽になります。
またガーデニングで出る土は、単純にただの土だけとは限りませんから、その内容に応じて分別してゴミに出すようにしてください。(たとえば鉢底石の代わりに軽量プラスチック製の鉢底材を使用した場合は、プラスチック系のごみになります)
ベランダ耐荷重の問題
多くの植物を育てるために沢山の鉢を並べたり、雰囲気をよくするために床面にデッキパネルやおしゃれなガーデンストーンなどを並べたり、凝り始めるとキリがないのがガーデニングです。普段あまり考える事はありませんが、実はベランダにも耐荷重が存在します。
ガーデニング資材を使用する場合には、管理規約上は問題なくても安全を考えてできれば軽いものを使用するようにしましょう。たとえば20リットルの土が入ったポットは単純に20キロ以上の重量がありますし、おしゃれな素焼きのテラコッタなどであれば鉢だけで5キロ10キロある場合もままあります。
ガーデンストーンなどでも立派なものでは10キロ前後あるものもありますし、さらに砂利を敷き詰めたり…と、あまりいろいろな物を使用すると無意識のうちに数百キロのものをベランダに置くことになりかねません。ガーデニング資材の中にはベランダガーデニングのために軽量化されたものもあるので、可能であればそういう物を使用するようにしましょう。
実際に、筆者個人の経験でも、資材は軽いものの方が普段の取り回しが行いやすく便利です。12号のイタリア製のテラコット鉢に寄せ植えをしていた事があるのですが、実際に土を入れてしまうと、少し移動させるにも一苦労でちょっとした模様替えにも困るようになった事があります。
植え替えなどを行うときにも大変ですからできれば軽量なものを使用する方が望ましいでしょう。
また通常時だけではなく災害時の安全経路の確保の意味でも、いざというときに動かしやすいものの方が何かと助かる事になります。
安全性の問題
育てている花を多くの人に見てもらいたいと思ったり、ベランダ内を広く使いたいからであったり、あるいは日差しを確保するため等の理由でベランダの外側にバスケットなどをつるして植物を育てている方がいらっしゃいます。これは絶対にやめてください。
マンションの1階に住んでいる場合でない限り、あなたのベランダの真下には別の人が住んでいてその人達のベランダがありますし、道路があって人が歩いているかもしれません。下のベランダには当然洗濯物が干される事もあるでしょうし布団をかけて干す人もいるかもしれません。道であれば人が歩いているかもしれませんし、自動車が停まっているかもしれません。
もしベランダの外側で植物を育てていると、水遣りの水や鉢からこぼれ落ちる土や枯れた花や葉が下に落ち、それがトラブルにつながる可能性があります。最悪の場合は鉢自体が落ちるかもしれません。そうなると最悪人命に関わる事故につながる可能性があります。
マンションのベランダの使用方法については管理規約にて定められている事が多いので、ベランダガーデニングであってもそれに従って使用するようにしてください。
また管理規約に関わらず、他の部屋の迷惑になる可能性がある事については細心の注意を払って行ってください。具体的な例を一つあげれば、農薬の散布です。
ガーデニングでは野菜の栽培だけでなくバラなどのガーデニングでも農薬散布を行う事はよくありますが、散布する薬剤は人間への毒性があるため、散布する際には他の部屋の迷惑にならないようによく注意して行う必要があります。
管理規約の問題
ここまで何度か管理規約について触れてきました。基本的な事なのですがマンションのベランダはその部屋の持ち主が自由にできる専有部分ではなく、あくまでも共用部の専有使用権を持っているにすぎません。
そのため、その部屋の持ち主であってもベランダの使用には制限がかかります。ベランダの使用規則についてはマンションの管理規約で定められていますので、それを遵守してベランダガーデニングを楽しむようにしてください。
楽しいはずのガーデニングがトラブルの元になってしまっては本末転倒です。ルールを守って楽しいガーデニングライフを送ってください。