皆さんは植物で覆われている家や施設をご覧になったことはあるでしょうか?そのような壁が一面植物に覆われているものを壁面緑化と言います。そんな壁面緑化を自宅で行うにはどうすれば良いか、基本的なことも含めて学んでいきましょう。
壁面緑化とは?
まずは一番基本的な壁面緑化とはどういったものを言うのかご紹介します。壁面緑化はつる植物を壁伝いに育成し、壁全体を覆ってしまうことを言います。壁面緑化されている施設の中で最も有名な施設は甲子園球場ではないでしょうか。球場の外壁全体につる植物が張り巡らされており、とても印象的です。壁面緑化されていると自然と目が行きやすく、興味を持たれている方も多いのではないでしょうか。
近年壁面緑化までは行かないものの、職場や家庭でもグリーンカーテンを取り入れていたり、壁面緑化を取り入れてオシャレなカフェを作り上げる方も増えてきています。では、壁面緑化をすることによってどのような効果を得られるのでしょうか。
壁面緑化にはこんな効果がある!
温度上昇を防ぐ
真夏になると40℃を越すような地域もあり、年々夏の気温が高くなっているように感じられます。強い日光が降り注ぐことで建物は当然暑くなり、建物内部の温度も上がってしまいます。
しかし、壁面緑化をすることによって普通の壁面と比べて建物の表面温度を下げる役割を果すことが実験にて証明されました。これを活かし、グリーンカーテンがなされるようになったのですが、窓だけでなく壁面を覆うことによって建物内部への熱浸透も防いでくれます。
省エネ対策
建物内部の温度が壁面緑化により調節されることで、普段はガンガンと効かせないといけない程暑い室内も涼しく快適に過ごせる程になります。そのため、夏の省エネ対策にもつながるのです。
リラックス・癒やし効果
緑色には見るだけで心を穏やかにし、リラックスさせる効果があります。壁面が植物に覆われていることで外を通る度にそのようなリラックス効果を生み出してくれます。
このように様々な効果を発揮してくれる壁面緑化をぜひ自宅でも行ってみてはいかがでしょうか?
壁面緑化を実際に作るには?
家全体を覆うような壁面緑化は難しいものの、壁の一部を壁面緑化にすることで先程紹介した効果も十分に得られるでしょう。では実際に壁面緑化を作るためにはどうすれば良いのでしょうか。
まず壁面緑化には壁に補助材を付けてつる植物を伸ばしていく登はん型、壁面の上部からプランターなどを用意し、そこから下に向かって植物を垂らすような形をとる下垂型、壁面にプランターを設置し登はんもしくは下垂させていく基盤造成型の3種類があります。
一番手軽なものは登はん型や下垂型でしょう。基盤造成型はプランターなどを壁面に設置する必要があるので手間が掛かりますが、迅速に緑化が出来るだけでなく、伸ばす・垂らすだけの壁面緑化とは一味違うものを作ることが出来ます。
登はん型の作り方
登はん型の作り方ですが、まずはワイヤーやネットなどの補助材を壁面に取り付けます。壁面に取り付けたら一番下につる植物を用意して補助材に巻き付かせます。
あとは日々手入れを行っていけば、つる植物は自然に上へと登っていくのでしばらくすると壁面緑化されるのです。登はん型はプランターを用意せずに地面に直接植えるところがあるならば、直接植えてしまっても構いません。
また、補助材を取り付けなくてもつる植物が上手く壁を伝ってくれれば補助材のコストも掛かりません。
しかし、これだと上手く壁伝いに伸びていかない可能性もあるので、補助材を使った方がより確実に壁面緑化することが出来るでしょう。
下垂型の作り方
屋上もしくはバルコニーにつる植物のプランターを用意します。
アイビーなどの場合そのまま下へ伸びていくので問題ないのですが、つる植物は下ではなく思わぬ方向へ伸びてしまう可能性もあるため、壁面に補助材を取り付け、そこにつる植物を巻きつかせておくと良いでしょう。
壁面緑化にオススメの植物をご紹介!
壁面緑化は大きく分類すると、つる性植物と付着性植物、常緑樹と落葉樹、多年草と一年草に分けることが出来ます。なお常緑樹と落葉樹はどちらも多年草に分類されます。
この中でも比較的育てやすく、初心者でも壁面緑化を成功させられるものは一年草のつる性植物です。例えばゴーヤやアサガオ、ヘチマなどがあります。
小学校などでも壁面緑化にゴーヤやアサガオを利用されているところは多いです。ゴーヤの場合、何といっても害虫に強く、手間が他の植物と違ってあまり掛からないことや黄色い花が咲くため見た目にも良いこと、実がなれば収穫できるため実用的なことなどが挙げられます。
アサガオは生育スピードが比較的早く、つるの伸びが良いという点がメリットになるでしょう。もちろん綺麗な花を咲かせるため、観賞用にもオススメです。
ヘチマは若い実なら食べられますし、熟してしまったものはヘチマたわしに利用することが出来ます。壁面緑化だけでなく他のメリットが挙げられることも、これらの植物が選ばれている理由として考えられます。
初心者であればまずは上記の植物から始めてみると良いのですが、段々慣れてきたという方や初めてでもさらにオシャレな植物を育てたいという方などにオススメとなる植物をご紹介していきましょう。
多年草・常緑樹のオススメ植物
- ヘデラ
壁面緑化の中でも比較的オーソドックスでよく壁面緑化に使用されている植物です。アイビーという愛称でガーデニングや観葉植物でも人気の高い植物となっています。壁伝いにどんどん成長していくため、登はん型に向いており、日光は当てた方がよく育つのですが真夏の日光は熱すぎて状態が悪くなってしまいます。多年草ではあるのですが、夏には日光の当たり具合に気を付けなくてはなりません。その代わり寒さを得意としており、氷点下でも育てることは可能です。
ヘデラにはおよそ500種類以上の品種があり、その品種によって葉の色から大きさ、見た目にも違いが見られます。自分の好みのヘデラを見つけて、ぜひ壁面緑化に活かしてみてください。
- テイカカズラ
元々日本の温暖な地域や朝鮮半島が原産のテイカカズラは、温度変化や病気・害虫などにも強く育てやすい植物の一つです。5・6月になると白やピンクの小さい花をたくさん咲かせるため、壁面緑化にすると非常に華やかな見た目にすることが出来ます。
また、秋・冬の時期は葉が紅葉するため1年中楽しめる植物です。日光があまり当たらない日陰や肥料がなくても十分育つので、育成で苦労することは少ないかと思われます。ただし、テイカカズラは水がたっぷり含まれている土を好むため、土の水が切れないように水持ちが良い土で育成するようにしましょう。
もしも土が乾きやすいのであれば、腐葉土や堆肥をたくさん使用し、出来るだけ水持ちが良くなるようにしておくことが大切です。
- スイカズラ
スイカズラは花に特徴のある植物で、壁面緑化でも人気のある植物です。5月から7月の間に花を付けるのですが、色が白からピンク、黄色へと変化していくという特徴を持っています。色づきが変化していくことから金銀花(キンギンカ)と呼ばれたり、寒さにも強く冬でも枯れずに葉を落とさないことから忍冬(ニンドウ)と呼ばれることもあります。
そのため花期になると大変鮮やかで、壁面緑化をカラフルなものにしてくれるのです。比較的丈夫で、半日陰のところでも育ってくれます。害虫はほとんど発生しませんが、たまにアブラムシが発生する場合があるので、アブラムシ対策をしておくと良いでしょう。
多年草・落葉樹のオススメ植物
- ナツヅタ
ナツヅタはあの甲子園球場にも生息している植物で、壁面緑化に適している植物です。それは直射日光に強く、暑さ・寒さなどの温度にも強いことから適していると言えます。夏は緑の葉が生い茂りますが、冬になると葉は落ちてしまいます。しかし、秋になると紅葉し、見た目にも美しい姿を見せてくれるのです。
育てる時の注意点としては、日向を好む植物なのでなるべく壁面でも日光がよく当たるようなところで育成させるようにしましょう。成長し壁面まで伝わったものの水やりは適度に行えば良いのですが、まだ壁面まで這っていない状態の時は水をたっぷりと与えなくてはいけません。水切れをしないよう、常に土が湿っているようにすると成長しやすくなります。
ただ、根が張り巡る前は水はあまり与えないようにしましょう。水をあまり与えないことで根が水を求めて、より広く根を張り巡らせるためです。基本的に丈夫なので病気や害虫は気にしなくても大丈夫なのですが、まだあまり成長していない段階は病気や害虫にも弱いため、必要であれば農薬を使うようにしましょう。
- ノウゼンカズラ
ノウゼンカズラは7・8月の真夏にオレンジ色の花を咲かせる植物で、日本では古くから育てられてきました。つるは良く伸びるため、処置をせずそのままにしておくとあちこちにつるを伸ばしてしまいます。
壁面緑化を行う際はワイヤーやネットなどの補助材に巻き付かせて育てていきましょう。強い日光を好むため、日陰ではなく1日中日光が当たるような場所で育成してください。日陰で育成してしまうと育ちも悪く、花も咲かせません。
暑さはもちろんですが、寒さにも比較的強いため温度で枯れることは少ないかと思われます。ただし、平地や暖地でも凍結してしまう恐れはあるので、凍結してしまいそうな時は地面に腐葉土を敷き詰めたりワラを敷いて寒さ対策をしてあげましょう。
今回比較的育成が簡単なものを紹介しましたが、大体のつる性植物は壁面緑化に適していると言えます。好みの植物を見つけて、壁面緑化にチャレンジするのも良いですよ。
壁面緑化によって様々な効果が得られますし、意外と手軽に始めることが出来ます。暑い夏が来る前に、壁面緑化を準備しておけば省エネにもつながるでしょう。
ぜひ壁面緑化に興味のある方はチャレンジしてみてください。